来月、2015年5月7日に総選挙(general election)というビッグイベントを控えるイギリス。
既に(3月30日に)国会は解散(dissolution)してしまっているので、今イギリスの国会議員はゼロの状態です。
日本とイギリスの政治(politics)のしくみというのはよく似ていますから、もしイギリス人との会話の中で、選挙などの話題が出てきたとしても、わりと話は通じやすいんじゃないかと思います。
ということで、「こんな政治のコトバは英語でいったい何と言うのか??」を思いつくままに書いてみます。
まず一つのポイントとして、辞書を使って、きちんきちんと英語に訳すことがいつも良いとは限りません。
これは普段の生活の中で、「冷蔵庫」のことを「refrigerator」とは誰も言わないのと似ています。(「fridge」(フリッジ)と言いますよね)
例えば、日本の「衆議院」をオフィシャルな英語にすると、「House of Representatives」、「参議院」は「House of Councillors」などと公式ウェブサイトにも出ています。
でもそもそも外国人は日本のことなどよく知りませんから、これをそのままイギリス人に伝えたとしても、「?」と首をかしげる人もいることでしょう。
国によっても呼び方はバラバラですし、こういう時はもうちょっと一般的な単語である、「Lower House」(下院)、「Upper House」(上院)などというコトバを使った方が便利。実際にイギリスのメディアも日本の記事を書くときにはそのようにしていることが多いです。
ちなみにイギリスの下院は「House of Commons」、上院は「House of Lords」であり、今回選挙をやろうとしているのは、「House of Commons」の方です。(アメリカは「House of Representatives」と「Senate」)
あと、「国会議員」を英語にすると、「Member of Parliament」。
これもまともに言うと長いので「MP」と略されることが多いです。いつだったか「衆議院議員は英語で何と言うのかね?」とエライ人に突然聞かれて焦ったことがありますが、「member of the Lower House」と言えば十分でしょう。
で、この「MP」をひっくりかえして「PM」にすれば「Prime Minister」、つまり首相の意味になります。安倍首相なら「PM Abe」でいいわけですね。
政党(party)はどうでしょう?
この5年間、イギリスは、「保守党」(Conservatives)と「自由民主党」(Lib Dems)の連立政権でやってきました。
最大野党が「労働党」(Labour)。あと、「補欠選挙」のシリーズでもご紹介してきたように、これまで勢いを急速に伸ばしてきた「イギリス独立党」(UKIP)の名前も知っておくと便利です。
今回の選挙も混戦が予想されているため、またしても一つの党が過半数(majority)を取れない「宙ぶらりん国会」(Hung parliament)になってしまうかもしれません。
日本の政党の名前まで外国人に伝える機会というのはあんまりないですが、一応ご紹介すると以下のとおり。
自民党:「LDP」(Liberal Democratic Party)
民主党:「DPJ」 (Democratic Party of Japan)
共産党はそのまま「Japan Communist party」。
公明党などは直訳するとおかしなことになるので、そのまま「Komeito」にしています。ただ、これでは意味がわからないということで、海外メディアの記事の中では、もう一歩踏み込んで「Buddhist-backed Komeito」 と書かれることも。
維新の党は「Japan Restration party」、そして今は無き、みんなの党は「Your Party」でした。
・・・こうしてみると、やっぱりいくらオフィシャルの英語でも、そのまま使ってしまうと通じないものが多いですね。
イギリス総選挙
イギリスの総選挙 知っておきたい日本との違い
前回のギリシャ話からの続きです。
人々の暮らしの格差をちょっとだけ垣間見たアテネ。
日本ではあまり注目されていなかったかもしれませんが、先月このギリシャで総選挙(general election)が実施されました。
ここ数年のギリギリとした緊縮財政(austerity)で民間の暮らしが圧迫されていると、ついに国民の不満が爆発。「Syriza」という急進左派の政党が勝利し、ヨーロッパにしてみれば、また心配の種が一つ増えたといったところでしょうか。
スコットランド独立投票の時に、「仮に彼らが独立しても、神奈川や埼玉と同じぐらいの経済規模」と書いたことがありますが、ギリシャもまさに同じぐらいでしょう。2010年のギリシャ(財政)危機と同じで、ギリシャそのものがどうこうと言うよりも、この火種が政治的&経済的に、欧州に「広がっていくこと」が心配されています。
↓ 小じんまりとしたギリシャの国会
そして総選挙といえば、ちょうど去年12月に日本で起きたばかりのイベントです。
いつものことですが、任期満了を待たずして起こった解散総選挙なので、英語では「snap election」という見出しが躍ってました。
ただ、当の日本人でさえ「なぜ今なのか」「お金かけてまでやらないといけないのか」と思っていたぐらいですから、遠く離れたイギリスではなおさら関心は薄かったようです。
よっぽど仕事の関係で日本をよく見ているイギリス人以外は、バックグラウンドで何があったのか把握している人などほとんどいないという感じでしょう。
「国会を解散する」 これを英語にすると 「dissolve the parlialment」。
日本のニュースをネットで眺めていると、「民意を問う」とか「国民に信を問う」とか、政治の世界にありがちな、コテコテの日本語が並んでいました。こういう時英語ではどんな言い方をするのか?と、ふと気になって新聞をチェックしてみると、「go to the people」とか「go to the polls」などとさすがにスッキリしたシンプルな表現をするものです。
これは勉強になるなあ・・・と思っていると、「伝家の宝刀」とか「大義なき解散」とか続々と出てくるので、もうキリがありません。言い回しがいちいち大げさで、脂っこいのです。
本来、国会のしくみやら、首相が持っている権限やらは、一応子どもの頃に教わることですが、こういうunclearな言葉や無意味にわかりにくい世界が私たちの興味を遠ざけている気がしてなりません。
これまで、日本とイギリスの政治はよく似ていると、「イギリスの政治のしくみ」シリーズでご紹介してきましたが、この「解散権」についても同じです。
首相がここぞと思うタイミングで国会(下院)を解散して、総選挙に討って出るというのはイギリスでも過去に行われてきたこと。
ただし、イギリスの場合は、2011年に「Fixed Term Parliament Act」という法律が制定され、5年毎に総選挙を実施することを定めました。
つまり、原則は解散不可に。一度政権を取れば、5年間は安定してリーダーシップを取れるというわけで、逆にいえば、日本のようにコロコロ解散ということもできない「縛り」にもなっています。今保守党と連立を組んでいる自由民主党(Lib Dem)のような小政党には有利な制度でしょうか。
そういうわけで、イギリスの次回の総選挙は、2015年5月7日と今からちゃんと日取りが決まっているのです。
どちらかというとイギリスの方が、日常会話の中で政治(politics)のトピックスが出てくる確率は高いです。
だからといって小難しいことを議論するわけでもありませんし、知らなくても別に困らないのですが、特に駐在や留学でイギリスに行かれる方は、こういう政治的な話題、日本と似ている点や違う点を知っておくと、話の幅が広がって、決して損はないと思います。(書籍の方では深入りしないようにしたので、このブログで補足しています)
次回のイギリス総選挙では、「UKIP」(イギリス独立党)というポピュラリスト系の政党が票を伸ばすであろうことは明らかに見えますが、どうなるでしょうね。
これは去年のスコットランドの独立投票と少し重なります。
愛国心からなのか、思いのほか独立派が最後まで健闘しましたが、その後、当てにしていた原油の値段はとんでもないペースで下がってきており、今にしてみれば、独立せずに本当に良かったというのが正直なところでしょう。
イギリスがEUを脱退して独り身になることがいかにリスキーなのか、経済面から国民、企業のfearを揺り起こすことも保守党の一つの戦略になりそうな気がします。
・・・ところで、日本の経費スキャンダルって一体どこへ行ったんでしょうね?
ほんの小さい改革をするのにも異常に時間のかかる国であり、いくらインフラやサービスが良くても、本当に先進国なのかと思う時があります。
■解散する(dissolve)、解散(disolution)
■緊縮財政(austerity)