「英語が話せないので海外に行くのは心配だ」という人が時々います。

そんなことを言いつつも、日本人は基本的な英単語や文法などはある程度わかっているので、行けばそれなりに何とかなるものです。本当に英語の通じない場所に行くと、もうどんなに簡単な単語でも通じないわけですから、それに比べればイギリスなどは全然大丈夫じゃないでしょうか。


けれど、手持ちの英語で何とかなるよね、という状況とは全く逆に、何年経ってもどれだけ勉強しても、苦手な英語というのもやっぱりあります。

例えば、「Lorry」(タンクローリー、大型のトラックのこと)とか「Trolley」(スーパーのショッピングカートのこと)みたいに、「L」や「R」がたくさん出てくる単語がその筆頭で、いくら真似てみてもネイティブと同じようにはなかなかしゃべれません。特に「R」の発音に悩まされるというのは、日本人ならほとんどの人が経験するのではないでしょうか。


ちなみに、ロンドンのおすすめレストランの一つに挙げてもいいと思う中に、「Orrery」というフレンチがあります。
雰囲気も含めて、レストラン自体はとても好きなのですが、どうも名前だけは苦手です。こんなの、もう単語の6分の3が「R」で独占されているわけであり、正しく発音できるわけがありません・・・。


ふと思うのですが、食べ物に人それぞれ好き嫌いがあるように、実は英単語にも人によって苦手なものとか、相性の悪いものがあるんじゃないでしょうか?
この単語だけはどうしても言えないとか、どうしても覚えられないとか。


例えば、「threshold」という単語。
無理やりカタカナで書くと、「シュレショウルド」のようになるのでしょうか。

私の場合、これがなかなか言えません。

辞書をひくと、「閾値(いきち)」などとむずかしい言葉が出てくるのですが、意外に英語ではニュースなどでよく登場してくる単語。例えば、「income tax threshold」ならば、「所得税が発生し始める所得の水準」という意味であり、何かの「ボーダー」とか「リミット」のような感じで使われます。

このほかにも、「玄関の敷居」という意味もあり、生活用語としても使われるので、知っておくと便利かもしれません。



ちょうど年末に日本でテレビを観ていると、夜中に何かの番組のミニコーナーで、なぜかイギリスにまつわるクイズを一問だけやってました。
確か、「イギリスでは、新婚のカップルが新居に入る時に必ずあることをします。それは何でしょう???」という感じの問題だったと思います。

ホテルの部屋で荷物の整理をしつつ、「何だろう??」と一瞬固まってしまいました。


答えを言ってしまうと、「抱っこ」。
新婚のカップルが新居の敷居(threshold)をくぐるときに、新郎が神父を抱え上げて・・・、いや、新郎が新婦を抱え上げて、お姫様だっこをしながら入るというのが、イギリスの一つの慣習だというのです。

これは私も知らなくて、聞いた時には「嘘くさいなあ」と思っていたのですが、試しにイギリス人に出題してみると、「あー、あれでしょう!」とすぐにピンとくるようです。

やはりその時は自分もした(された)のですか?と聞くと、遠い目をしてウーンと考え込んで、「多分された」とか、「確かしたはずだ」とか・・・。
イギリスでは必ずやらないといけないのですか?と聞くと、「重さにもよるのではないか」などと、ロマンチックでない答えが多いのが逆にとてもリアルで、これは確かに一つの慣習かもしれないと思いました。
(もっと結婚して日が浅い人がいればよかったのですが)


まあ結婚前に同棲したりするのは当たり前になっている時代ですから、そんな伝統もだんだん意味を持たなくなっているのかもしれませんね。

でもなかなか面白いので、もし知り合いや英語の先生にイギリス人がいたら、ぜひ話のネタにしてみてはいかがでしょうか。私にとっては納豆ぐらい嫌いな単語、「threshold」を使ってみる練習にもなりますし。


■慣習(custom)
■玄関の敷居(threshold) ※「新婦を抱っこして敷居をくぐる」なら、carry the bride over the threshold
■新郎(groom)、新婦(bride)