イギリスも少しずつ寒くなってきたとは言え、ロンドンなど12月にしては暖かい方でしょう。
むしろ日本の方が寒波がやってきたとかで、大変そうです。夏と冬の落差があまりに激しすぎますね。


さて、クリスマスシーズンに突入し、日本でもイギリスでも何かと外食が増える時期ではないでしょうか。
誰かゲストを食事に接待する時などに悩んでしまうのが、レストラン選び。

身内で気楽に行くだけならば、値段もリーズナブルで美味しいお店を選べばいいのですが、特別なお祝い
だったり、ビジネスが絡んだりすると、ちょっと勝手が違ってきます。
オンラインブッキングできるサイトで、あえてレストランを値段の高い順番に並べたりという、普段ならあり得
ないことをしてみたり・・・。

これはプレゼントなどを買う時もちょっと似ていますよね。

普通ならば、モノの値段が上がれば上がるほど買い手は少なくなっていくはずなのですが、世の中には
むしろ値段が高い方が売れる商品もあるということです。
ブランド品なんかはその典型で、セール中に安売りをしないことも一つのステータスになったりしますよね。

前回の記事は、「ディスカウントしているから得しているはずだ!」という思い込みの話に触れましたが、
「高いから良いはずだ!」という思い込みもまた、ショッピングには付き物。
本来の「良いものだから高い」の理屈が、いつの間にか逆転して、心理の世界に変わっているという感じ
でしょうか。


「ブランド」というと、服とか靴とかバッグとか、ファッション系を思い浮かべますが、食べ物だってそうですね。

イギリス人がよく食べるものの一つに、「Baked beans」というのがあります。
これは豆のケチャップ煮のことで、「English breakfast」というイギリスの伝統的朝食メニューの中に必ずと
言っていいほど付いてくるもの。
スーパーに行くとこの缶詰が何種類もズラズラと並んでいて、ちょっと圧巻です。
何がどう違うのかよくわかりませんが、彼らにとってのbaked beansは、日本人にとっての納豆的な存在と
言えるのかもしれません。

で、この中でも揺るぎないブランドを確立しているのが「Heinz」(ハインツ)。
(日本でもケチャップが有名ですかね)


確か何かのテレビでやっていた実験なのですが、

二つの缶詰baked beansを用意して、一つはHeinzのブランドで、もう一つはスーパーのプライベートブランド
から出ている安いもの。これらを街行く人たちに食べ比べてもらって、どちらが美味しいか選んでもらうという
テストです。

すると、さすが王者Heinz。
どちらが好みですか?と聞かれると、「いやー、やはりHeinzが美味しいよ!」と答えた人が圧倒的多数。

・・・・・・

しかし、実はこの人たちが食べたのは、どちらもスーパーのプライベートブランド商品だったというオチが
あります。

「スーパーのやつは甘すぎる!」「明らかに味が違う!」とか自信満々にコメントしてしまった人たちは沢山
いても、「どちらも同じだよ」と答えられた人はほとんどいませんでした。

まあこれはちょっとズルいテストだとは思いますが、ブランドのものなら美味しいはずだ、高いものなら良い
はずだという先入観が、いつの間にか私たちを支配して、味覚まで変えてしまうというのはあらためて驚きです。
他人事のように言っていますが、自分もこのテストをされていたら、同じように引っかかっていたことでしょう。
このあたりはCMなども関係しているでしょうし、奥が深いなあと思います。


ブラックフライデーは過ぎ去り、次に控えているのがクリスマスセール。
イギリスのセールは値引き幅も大きく楽しいのですが、ちょっと一度頭を冷やしてから臨みたいところです。


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